2018年12月01日号
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artscapeレビュー

フランス国立ギメ東洋美術館・写真コレクション Last Samurais, First Photographs──サムライの残像

2015年06月01日号

会期:2015/04/18~2015/05/31

虎屋 京都ギャラリー[京都府]

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の会場のひとつ、虎屋 京都ギャラリーでは、幕末から明治期に消え行く侍たちを撮影した写真が展示されている。ギメ美術館の創立者、エミール・ギメは1876年に日本を訪れ、写本や書籍、版画、磁器、仏教彫刻などをフランスへ持ち帰った。その後、ギメのコレクションを継承してきた同館では、現在、19,000枚以上の日本関連の写真を収蔵しているという。本展には、そのなかのおよそ20点が展示されている。ベアト、シュティルフリート、パーカーら異国人であるヨーロッパの写真家が撮影したものもあれば、日下部金兵衛、小川一真ら日本人写真家が撮影したものもある。
なかでも感慨深いのは、英国海軍の文官、サットンが撮影した、最後の将軍、徳川慶喜の肖像である。普段着の帯刀した羽織袴姿の一点と礼装である直衣姿の一点で、どちらも座した両膝の上に握りしめられた二つの拳と斜め遠方にむけられた堅い眼差しが印象的だ。緊張感漂う慶喜の姿とは対照的に、「将軍」というタイトルの写真には将軍の地位を示す舞台衣装と小物を身につけた歌舞伎役者がぼんやりとした表情で佇んでいる。2枚の写真の隔たりはおそらく20年から30年。この短いあいだに、将軍は実像からステレオタイプ化して虚像へと変化したのである。
激動の時代、写真はその変化を生きた日本人の姿をつぶさに伝えている。[平光睦子]

2015/05/18(月)(SYNK)

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