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柴田精一 新作展

2015年07月01日号

会期:2015/05/30~2015/06/27

GALLERY YAMAKI FINE ART[兵庫県]

折れ曲がりのあるレリーフや、万華鏡のイメージを思わせる切り紙作品などで知られる柴田精一。本展では上述した作品の他、雀や猫をモチーフにした絵画作品を出品。絵画は、複数の筆が並ぶ特製品を用い、複数の同一モチーフを同時に描くという珍しい手法が取られていた。雀を咥えた猫を描いた絵画や、女性の顔の周囲を複数のカラスが飛翔するレリーフなど不気味な印象を与える作品もあったが、その背景には「神戸連続児童殺傷事件」(1997年)があるとのこと。犯人と同世代で神戸育ちの柴田があの事件から受けた影響の大きさに思いを馳せた。さらに驚愕したのは、本展の会期中に事件の犯人だった少年Aが単行本を出版したことだ。この不可思議な共時性は一体どういうことだろうか。

2015/06/05(金)(小吹隆文)

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