2017年05月15日号
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artscapeレビュー

新納翔「築地0景」

2015年07月15日号

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会期:2015/06/09~2015/06/27

ふげん社[東京都]

新納翔は1982年、横浜生まれ。早稲田大学中退後、2009~10年にGallery Niepceのメンバーとして、本格的に写真制作活動をスタートさせた。前作の東京・山谷を7年かけて撮影した「Another Side」(2012年にLibro Arteから写真集として刊行)もそうだったのだが、新納は徹底して「内側からの視点」にこだわり続ける写真家だ。今回、東京・築地のギャラリーと書店とカフェが合体した「コミュニケーションギャラリー」ふげん社に展示された新作の「築地0景」でも、警備会社のガードマンとして勤務しながら、メインテーマである築地市場を撮影し続けたのだという。
愚直といえば愚直なドキュメンタリーの手法だが、結果として、とてもユニークな感触を備えた作品として結実したのではないかと思う。市場内のモノたちに寄り添うように撮影することで、普通は「見えない」それらの細部がありありと浮かび上がってくる。それだけでなく、商品や人がめまぐるしく動き回っているはずの高度資本主義経済のメカニズムが、むしろ冷ややかな距離感で捉えられているのが興味深かった。
いうまでもなく、築地市場は2016年中には豊洲に移転することになっている。いま写し出されている眺めは、近い将来には「失われたもの」になるわけだ。新納が、そのことを踏まえて撮影を続けているのは間違いないだろう。ぜひ移転後も撮影を続けて、いったん「0」に戻った市場の景色が、どんなふうに変質しつつ次の時間を刻んでいくのか、過去・現在・未来を包摂したシリーズとして成長していくことを期待したい。

2015/06/09(火)(飯沢耕太郎)

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