artscapeレビュー

ボルドー展──美と陶酔の都へ

2015年08月15日号

会期:2015/06/23~2015/09/23

国立西洋美術館[東京都]

フランス西部の中核都市ボルドーにゆかりのある美術を紹介する展覧会。プロローグに先史時代のヴィーナス像が出ているのがうれしい。通常ヴィーナス像というと獣骨か石を彫った手のひらサイズのものが大半だが、この《角を持つヴィーナス》は大きな岩に浅浮彫りしたもの。つまりもともと手にとって愛でるものではなく、不動産の一部だったわけだ。ほかにも顔料や獣脂ランプ、パレット代わりの平たい石など洞窟壁画を描くときに使ったであろう道具類もある。展示は古代、中世、近世と続くが、目玉はやはりドラクロワの《ライオン刈り》。これは1855年パリで初めて開かれる万博のために描かれた作品で、幅360センチある大作だが、普仏戦争中に上3分の1ほどが焼失。でもボルドー出身のルドンによる焼失前の模写も出品されているので、全体像は想像できる。激しい動きといい鮮烈な色彩といい、まさにロマン主義そのもの。遡ればルーベンスを媒介として、レオナルド・ダ・ヴィンチの《アンギアーリの戦い》に源流を求めることもできる。そのルーベンスによる自分の首を持つ《聖ユストゥスの奇跡》も、ダゴティのミニアチュール(細密肖像画)も必見。最後に、CAPCボルドー現代美術館に生まれ変わる直前の倉庫で制作されたジョルジュ・ルースの作品写真が唐突に展示されている。古いもんばかりじゃなく、現代美術にも力を入れてるんだぞとアピールしたいのか?

2015/07/01(水)(村田真)

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