artscapeレビュー

フォトふれ NEXT PROJECT EXHIBITION 2015

2015年09月15日号

会期:2015/08/08~2015/08/09

杉山美容室隣空き店舗[北海道]

31回目を迎えた東川町国際写真フェスティバルでは、毎年イベントの運営をサポートするボランティア(フォトふれんど)を募集している。写真学校や大学の写真学科の学生を中心に、全国から北海道に集まるボランティアたちは、いろいろな出会いを経て成長し、それぞれの場所に戻って活動を続けてきた。そのフォトフレンドのOB,OGの有志たちが、「表現者として帰ってきて」、昨年から写真展を開催するようになった。休業中の店舗をそのまま利用した展示は、なかなか見応えがあった。
今回の参加者は太田悦子、詫間のり子、伝田智彦、土肥志保美、永井文仁、藤川麻紀子、フジモリメグミ、横山大介、吉田志穂の9名。2007年の写真新世紀準グランプリの詫間のり子や、2014年に1_WALL展のグランプリを受賞した吉田志穂など、既に一定の評価を得ている者もいるが、多くはこれから先に自分の作品世界を確立していかなければならない時期にある。考えてみれば、彼らのような「中堅」の写真作家たちが作品を発表していく機会は、個展を除いてはあまり多いとはいえない。このような機会に、互いに競い合いながら、自分の作品のレベルを確認し、次のステップにつなげていくのはとてもいいことだと思う。
それぞれ、のびのびと自分の世界を展開していたのだが、その中でも横山大介の作品「Telephone Portrait」に可能性を感じた。横山は吃音者であり「発話時に言葉がうまく発せられない時があり、会話でのコミュニケーションに違和感をいだいて」いるのだという。その彼が「電話をかける」という行為をする人物を被写体に選ぶことで、発語という行為をあらためて見直そうとしている。まだ数は少ないが、これから先にどんな展開があるのかが楽しみだ。残念ながら、他の参加者たちの多くは、作品をどう展開し、定着するのかというプロセスにのみ神経を集中し過ぎていて、制作の動機がくっきりと見えてこないように感じた。会場の都合で、来年以降にも開催できるかどうかは微妙だというが、形を変えてぜひ継続していってほしい企画だ。

2015/08/08(土)(飯沢耕太郎)

2015年09月15日号の
artscapeレビュー