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アート オブ ブルガリ──130年にわたるイタリアの美の至宝

2015年10月01日号

会期:2015/09/08~2015/11/29

東京国立博物館[東京都]

2014年に創業130周年を迎えたイタリアのハイジュエリーブランド、ブルガリ。そのアーカイヴと個人コレクションから、約250点のジュエリー、時計を紹介する展覧会だ。ブルガリというブランドは、ギリシャで代々銀細工師の家に生まれたソティリオ・ジョルジス・ブルガリが1884年にイタリア・ローマに移り、システィーナ通りに開いた店を起源とする。展示は創業者ファミリーが手がけた銀製の装飾品から始まり、1920年代のアールデコ、そして現代に至るまで、メルクマールとなったデザインが編年的に取り上げられている。展示を見るとブランドを確立するのは1950年代からだろうか。それまでのパリと同様のスタイルのジュエリーから離れ、さまざまなカラーの石を使った独自のスタイルを確立してゆく。また同時期はイタリア映画全盛期で、チネチッタ撮影所に集まった女優たちにブルガリのジュエリーは愛されたという。女優たちのなかでも本展で大きく取り上げられているのはエリザベス・テイラー。チネチッタで撮影された映画「クレオパトラ」の衣装、彼女が身につけたジュエリーなどが展示されている。
 会場はこれまでにもたびたびハイブランドの展覧会会場に用いられてきた東京国立博物館表慶館。明治末期を代表する洋風建築と歴史あるブランドの展示はよく似合う。中央ドーム天井には色とりどりのジュエリーをモチーフにした万華鏡のような映像のプロジェクションマッピング。両翼階段室の壁面にはローマの街と代表的なジュエリーの映像が映し出されている。2階中央の回廊にはブルガリの腕時計「ブルガリ・ブルガリ」とその原型となった「ブルガリ・ローマ」の展示があり、吹き抜けから円形のエントランスホールを見下ろすと、そこが古代ローマのコインをモチーフにした「ブルガリ・ブルガリ」のフレームを模して装飾されていることがわかる。ということは、両翼に拡がる展示室は腕時計のベルトに見立てられているということになろうか。[新川徳彦]

2015/09/30(水)(SYNK)

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