2018年05月15日号
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artscapeレビュー

平成27年度学習院大学史料館開館40周年記念「名品続々!教科書を彩る学習院コレクション展」

2015年11月01日号

会期:2015/10/03~2015/12/05

学習院大学史料館[東京都]

学習院大学史料館の開館40周年を記念する本展は、所蔵品のなかから私たちが歴史の教科書で読んだり見たりしたことがあるコト、ヒト、モノに関連する「名品」を、おもに時代別に五つのパートに分けて紹介している。アンソロジー的構成であるが、学習院の教育の歴史と史料館40年の蓄積がうかがえる好企画である。「うるわしの原始・古代」のパートでは応神陵古墳出土と伝えられる水鳥の埴輪や、学習院の教材として用いられた縄文土器のレプリカ。「中世の美意識」ではフランス文学科で教鞭を執った辻邦生の『西行花伝』の特装本と作中に登場する「蹴鞠」の実物など。「近世社会に投じられた波紋」では「武州世直し一揆」関連文書。「花開く近代」ではキヨッソーネによる大久保利通などの肖像版画やラグーザによる「山尾庸三像」、皇室ゆかりの品々。そして「学習院の哲学者たち」では、西田幾太郎、鈴木大拙が柳田謙十郎に宛てた書簡が出品されている。
 とくに興味深く感じた資料を二つあげる。ひとつは「笏(しゃく)」である。有名な聖徳太子像や、束帯姿の人物像が胸の前に掲げ持つ細長い板──笏──は、威儀を整えるための形式的なものと思っていたが実用的な用途のある道具だという。公家にとって、儀式を間違いなく滞りなく進めることはきわめて重要なことで、そのために笏の裏側に次第を書き付けた紙──笏紙──を貼りつけ、必要に応じてこれを参照したという。つまり笏はカンニングペーパーとしての役割をもっていたのだ。展示には教材用の掛図として明治42年に制作された複製の「聖徳太子像(唐本御影)」と、西園寺家寄託史料の笏、笏紙(江戸時代初期)が出品されている。
 もうひとつは、ドルメン教材研究所が昭和25年ごろに制作販売していた縄文土器のレプリカである。明治大学考古学研究室の支援を受け、原型の制作は濱田庄司が担当したほか、レプリカの底面に押された「D」の文字の銘印は芹澤長介の父である芹澤銈介がデザインするなど、制作には民藝運動に関わりのある人びとが携わった。精緻なレプリカであるが高額な商品であったことで販売は伸び悩み、予定されていたシリーズは途中で打ち切られ、ドルメン教材研究所は昭和26年頃に解散した。現存が確認されている製品は、学習院大学史料館を含めて2例のみなのだという。[新川徳彦]

2015/10/21(水)(SYNK)

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