2018年07月15日号
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artscapeレビュー

岸井大輔『始末をかく4「茶屋建築に求めてゆかなければならぬ」』

2015年11月01日号

会期:2015/10/03~2015/10/12

横浜各所[神奈川県]

馬車道の喫茶店サモアールを出発点に、横浜各所(10カ所)を歩いて見ていく演劇作品。各所に着くたび手紙を渡される。手紙には、次の場所の来歴が岸井の言葉で語られる。横浜は世界的な観光地である。日本丸のあたりで手紙を読む。ドックの保全が芸術作品によって、次に商業施設によって、いまは「BUKATSUDO」(街のシェアスペース)によって図られているとの説明を受ける。景色が、いつもと違って見える。他には、横浜市のクリエイティブシティ事業で補助を受けるアーティストのアトリエ、展覧会開催中の横浜市民ギャラリー、ヨコハマアパートメント、かつて居酒屋だった建物、あるいは黄金町バザールが会場となった。岸井は『POTALIVE』で散歩を演劇として捉える活動を10年以上前から始めている。2時間以上ゆっくりと横浜の港エリアだけではなく、山のほうのエリアもめぐる。手紙にも書いてあったが、疲労度でいえば、これは高尾山登山に類する体験だ。丁寧に歩くことで、横浜が立体的に見えてくる。食べたり飲んだりも、バスやタクシーでの移動も、すべては日常のことでありながら、劇の一部でもある。痛快なのは、上演の輪郭が見えないことで、「始末」とは始まりと終わりのことだというのだが、それを「欠いている/書いている」のがこの演劇なのだ。途中で降りてもよい。かくいう筆者も、見過ごしたエリアを残してしまった。座席の角度で見えない芝居ができてしまうように、各自の体験によってしか「始末」は問えない。観客はすべて異なる演劇を観た。劇場に縛られないが故のことだろう。

2015/10/12(月)(木村覚)

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