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artscapeレビュー

松谷武判の流れ MATSUTANI CURRENTS

2015年11月15日号

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会期:2015/10/10~2015/12/06

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

具体美術協会のメンバーであった松谷武判の、新作を加えた回顧展。初期の日本画、ボンドをレリーフ状に盛り上げた具体時代の絵画作品、版画、巨大なロール紙に鉛筆の線を描き重ねた黒一色の平面作品、ボンドの膨らみを鉛筆で黒く塗りつぶした作品、新作のインスタレーションに至るまで、約60年の軌跡を辿ることができる。
初期の幾何学的な造形構成の日本画においてすでに、「生命」というタイトルで染色体のような形が描かれていたが、松谷の関心は一貫して、細胞の分裂や増殖、生命の有機的エネルギーの表出にあることが窺える。具体時代のボンド絵画は、盛り上げたボンドの塊にできた裂け目が目や口、細胞分裂の過程、卵からの孵化、胎盤といった有機的なイメージを連想させる。さらに、一枚の紙を鉛筆の線で黒く塗りつぶした作品群を経て、近作では、ボンドの膨らみが鉛筆で黒く塗りつぶされている。そこでは、内部からの強い圧力で膨張し、表面張力ギリギリに膨らんだ緊張感や破裂の凄まじいエネルギーが、黒という色彩によって相乗効果を生んでいる。被膜を突き破って、どろりとした物質があふれ出す。あるいは、さざ波のように波打つ表面の起伏。光の当たる角度によって、光沢感と暗く沈む部分が交替する、豊穣な黒。それは、画家の身体的運動の痕跡でもある。ボンドと黒鉛という、無機的な素材、メタリックな質感、モノクロームの色彩にもかかわらず、硬質なエロスとでも言うべきものを開示していた。

2015/10/30(金)(高嶋慈)

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