2017年10月15日号
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artscapeレビュー

そこにある、時間──ドイツ銀行コレクションの現代写真

2015年11月15日号

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会期:2015/09/12~2015/01/11

原美術館[東京都]

ドイツ銀行の現代美術コレクションは、「紙の作品」のコレクションとしては世界最大(6万点!)を誇る。本展は1979年から開始されたそのコレクションから、「時間」をテーマとした写真作品を厳選して構成している。「Part1 時間の露出/露出の時間」「Part2 今日とは過去である」「Part3 極限まで集中した時間」「Part4 私の夢は未来にあらず」の4部構成で、約40組、60点の作品が展示されていた。数はそれほど多くないが、多彩なアイディアを形にした、クオリティの高い作品が多い。
特徴的なのは、「現代美術」としてコレクションされた写真作品ということで、現実を再構築する、あるいは現実そのものを捏造するタイプの作品がほとんどということだ。当然ながら、ドキュメンタリー、あるいはスナップショットの文脈の仕事はまったくない。写真作品の「アート化」が、まさに1980年代以降に加速していった状況を踏まえた展示といえるだろう。
もう一つは、アジア、アフリカ、中近東、中南米などの作家の作品が目につくことだ。朱加(チュウ・ジア、中国)、曹斐(ツァオ・フェイ、同)、ヂョン・ヨンドゥ(韓国)、ダヤニータ・シン(インド)、ゾーラ・ベンセムラ(アルジェリア)、シリン・アリアバディ(イラン)、フリオ・セザール・モラレス(メキシコ)らの作品が、新鮮な眺めを生み出していた。これまでの欧米中心の写真シーンが急速に解体し、多極化していることがよくわかる。もっとも、本展はシンガポール、インド、そして日本と、アジア諸国を巡回する企画であり、そのことが作家の人選に影を落としていることは考えられる。だが、杉本博司、佐藤時啓、やなぎみわというラインナップの日本人出品作家も含めて、現在の写真表現の主流が、欧米諸国の影響圏から脱しつつあることは間違いないと思う。

2015/10/07(水)(飯沢耕太郎)

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