2017年10月15日号
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artscapeレビュー

ジュリア・バイエル「浮かぶ水」

2015年11月15日号

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会期:2015/09/11~2015/10/11

Gallery OUT of Place TOKYO[東京都]

アーツ千代田3331内のGallery OUT of Place TOKYOで開催された、ジュリア・バイエルの「浮かぶ水」展がなかなか面白かった。まったく名前を知らなかった写真家だが、独特の作品世界の持ち主である。
バイエルは1971年、ドイツ・アウグスブルクに生まれ、ベルリンを拠点として活動している。ドイツの写真家らしく、フォルマリスティックなアプローチも見られるが、女性らしい柔らかに伸び縮みする視点を併用することで、ゆるやかな膨らみのある画面に仕上げていた。今回展示されたのは、2013年に刊行された写真集『Water Matters』に収録された作品に、近作のアイルランド滞在時の写真を加えた、大小のモノクロームプリントが20点。光と影の投影、水の表面の質感の描写を強調して、水と戯れる人たちの姿を巧みに切り取る作品が多いが、雨や雪などの自然現象の写真も含んでいる。さまざまな「水の事柄」のありようを、多面的に提示しようするシリーズといえる。
実は、彼女は2005年に奈良を中心に日本に滞在しており、その時に銭湯がすっかり気に入って通い詰めていたのだという。そこで撮影した写真をまとめた『銭湯』(ベルリン日独センター、2008年)という作品集もある。それを見ても、やはり彼女の関心は、水と人との身体性を介した触れ合い、溶け合いのプロセスを、細やかに定着することにあるのではないだろうか。今のところは、まだバラバラな状態だが、将来的にはそれらが一つにまとまって、より包括的な作品に成長していくことも充分に考えられそうだ。

2015/10/11(日)(飯沢耕太郎)

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