artscapeレビュー

中村政人「明るい絶望」

2015年11月15日号

会期:2015/10/10~2015/11/23

3331アーツ千代田[東京都]

「ソウルー東京1989-1994」とサブタイトルにあるように、韓国に留学した1989年から94年まで、デビュー前後の5年間に撮りためた写真から700点近くを選んで展示している。大半はモノクロプリント。韓国時代は、まるでもの派のように道端に鉄板が置かれていたり、角材が鉢植えにコンクリートで固められていたり、落書きを消すために白く塗られた部分に落書きされていたりという、路上観察学的な写真が多数ある。これは韓国ならではの珍しさからカメラを向けたというより、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートとの類似性や、「I am not doing, but being(なにもしない、ただあるだけ)」という存在への共感から撮られたものだろう。そしてここから初期の鍵穴型オブジェやハト除け作品が発想されたことがわかる。これらの写真はいわばアイデアのデータバンクの役割も果たしていたようだ。92年に帰ってからも路上観察学風の物件は撮られているが、それより仲間のアーティストたちのポートレートや制作風景などドキュメント風の写真が増えていく。「中村と村上」展の村上隆をはじめ、「ザ・ギンブラート」「新宿少年アート」の中ザワヒデキ、小沢剛、岩井成昭らだ。傍観者から、つくる側、主催する側へと立場が変化していくプロセスが読みとれる。全体を通して繰り返し登場するのは、路上に置かれた石やコンクリートの突起物、ボウリング場のピンのハリボテ広告、玄関にとりつけられたライオン錠など。どれも男性的、ファルス的なのが意味深だ。写真のほかに、新作の絵画と彫刻もある。自動車の車体に使われる塗装を施した湾曲した平面と、各地の民芸品の人形を同じ製造技術で等身大に立体化したもの。まあこれを絵画・彫刻と呼ぶかどうか。どちらも90年代にプランニングしたものを今回実現させたそうだ。

2015/10/10(土)(村田真)

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