2018年01月15日号
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artscapeレビュー

菱沼勇夫「Kage」

2016年01月15日号

会期:2015/12/08~2016/12/20

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

2015年に菱沼勇夫が開催した個展は、今回で4回目になるという。この数の多さはやや異常事態というべきだろう。これだけの頻度だと、普通ならボルテージが落ちてくるものだが、菱沼の場合はそうならないどころか、逆に展示の密度が上がってきているように感じる。今年、最も飛躍を遂げた写真家の一人といえるのではないだろうか。
今回のTOTEM POLE PHOTO GALLERYでの展示は、前回の同ギャラリーでの個展「Kage」(2015年4月14日~26日)の続編にあたる作品で、文字通り、さまざまな事物の「Kage」の領域に目を凝らそうとしている。とはいえ9点(そのうち8点は100×100センチの大判カラープリント)の作品の内容にはかなりばらつきがあり、沼の風景、裸身のセルフポートレート、鳥の死骸、狼の剥製、ネックレスを握りしめる手、妊娠中の女性のヌードなど多岐にわたる。中には菱沼自身の排泄物を捏ね上げて象ったという髑髏の写真まである。それらがどのように結びついて「Kage」の世界を作り上げているのかは、まだ判然とはしない。だが、彼が何か強い衝動に突き動かされて被写体を選択し、シャッターを切っていることは伝わってくる。いまはその手応えを信じて撮り続けていく時期なのだろう。このテンションを維持するのは大変だろうが、とりあえずは撮影と発表のペースを維持していってほしい。観念と身体性とが独特の形で結びついた、面白い作品世界が見え始めているのではないかと思う。

2015/12/16(水)(飯沢耕太郎)

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