2018年10月15日号
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artscapeレビュー

東松照明「太陽の鉛筆」

2016年01月15日号

会期:2015/12/11~2016/01/24

AKIO NAGASAWA Gallery/ Publishing[東京都]

東松照明の『太陽の鉛筆』(毎日新聞社、1975)は、いうまでもなく日本の戦後写真を代表する写真集の一つである。1971年の沖縄の「本土復帰」を挟んで、那覇と宮古島に7カ月滞在した東松は、南島の光と風に触発された、のびやかなカメラワークで沖縄の風景や人々の姿を捉えていった。さらにその後の東南アジアへの旅の途上で撮影されたカラー作品を加えて編集・出版されたのが『太陽の鉛筆』である。東松が2012年に亡くなってから3年あまりを経て、その名作が復刊されることになった。赤々舎から刊行された『新編 太陽の鉛筆』は2冊組で、旧版の写真構成をほぼそのまま活かした『太陽の鉛筆1975』(2点のみ未掲載、理由は非公表)と、伊藤俊治と今福竜太が編集した『太陽の鉛筆2015』から成る。後者は、5回にわたって訪れたというバリ島の写真群など、旧版刊行以降の1980~90年代に撮影された沖縄や東南アジアの写真を含む。その刊行にあわせて、東京・銀座のAKIO NAGASAWA Gallery/ Publishingで写真展が開催された。
カラー18点、モノクローム30点は、予想に反してすべて『太陽の鉛筆1975』から選ばれていた。むろん、このシリーズは東松自身のキャリアにおいても、ちょうど折り返しの位置にある重要な作品であり、沖縄を舞台に日本人と日本文化のルーツを探ろうとしたスケールの大きな問題作である。だが、旧版の刊行から40年を経て、それがどのような意味を持つ作品だったのか、あらためて問い直さなければならない時期にきていることは間違いない。伊藤と今福の再編集は、その意味で新たな問いかけとなるものであり、2冊の写真集の作品を対照させてみたかったのだ。今回ははぐらかされてしまったが、ぜひそういう機会を作っていただきたい。
どうしても気になるのはデジタルプリントの色調と諧調である。銀塩印画紙を見慣れた目で見ると、かなり希薄な印象を受けてしまう。東松は晩年、デジタルプリントによる表現を模索しており、今回の展示もその延長上のものなのだが、やはり違和感を覚えてしまった。またオリジナル版の『太陽の鉛筆』と今回の『太陽の鉛筆2015』では、プリントのコントラスト、質感がまったく違う。そのあたりをどう捉えていけばいいのか、僕自身にもまだ答えは出ていないが、考え続けていかなければならない課題といえる。

2015/12/17(木)(飯沢耕太郎)

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