2018年01月15日号
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artscapeレビュー

林勇気「STAND ON」

2016年01月15日号

会期:2015/11/24~2016/12/19

ギャラリーほそかわ[大阪府]

林勇気は、パソコンのハードディスクに大量にストックした写真画像を、1コマずつ切り貼りして緻密に合成することでアニメーションを制作している映像作家である。本個展では、モニターに流れるアニメーション、壁面に投影された実写映像、3Dプリンターで制作した立体がそれぞれ互いに入れ子状に関係し合い、現実と仮想空間の境目が曖昧化した空間が立ち現われていた。
アニメーションでは、輪郭線だけの男性が、部屋から出て、街を歩き、トンネルを抜けて林、崖の上、野原を歩いていく様子が描かれる。一方、壁面に大きく歪んで投影された実写映像では、街路樹、コンクリートの壁、フローリングの床、草むら、石などをノックする手が映る。現実の確かさや手触りを確かめ、自分の存在を誰かに伝えようとするかのように、何度も反復される行為。よく見ると、ノックされた樹や石などの被写体は、アニメーションの仮想世界を構成するパーツとして、現実世界から「移植」されていることに気づく。
このように、現実と仮想世界の境目が曖昧化した空間で、「不確かさ」の象徴として登場するのが、サイコロである。アニメーション内では、男性の進路は手にしたサイコロの目で決められる。また、実写における「ノックの回数」は、林自身がその場でサイコロを振って出た目の数に従っているという。そして、このサイコロ自体、3Dプリンターでつくった立体物として展示されている。だが、3Dスキャンの際にデータが読み取れなかった底面だけが、「目」がなく空白のままだ。実物からデータ化の過程を経て再構築されることで、生み出された歪みやひずみ。それはまた、映像の展示方法においても、歪みや不安定さとして反復されている。
現実の確かな手触りへの希求と、予測不可能な不確かさの間で揺れ動く世界。実写の断片がフィクションの世界を形づくる。あるいは、フィクションの世界を微分すると、個々の要素は現実の断片でできている。そうしたどちらにも定位できないあてどなさや浮遊感は、ポスト・インターネット時代の知覚や身体感覚を浮かび上がらせている。


林勇気「STAND ON」会場風景

2015/12/05(土)(高嶋慈)

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