2018年01月15日号
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artscapeレビュー

MOMATコレクション「特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」

2016年01月15日号

会期:2015/09/19~2015/12/13

東京国立近代美術館[東京都]

東近が所蔵する藤田作品25点に、京近の1点を加えた展示。このなかにはアメリカから永久貸与された戦争記録画14点も含まれており、その一挙公開は初めてのこと(ちなみに別の展示室の鶴田吾郎の《神兵パレンバンに降下す》を含めて、戦争記録画15点の展示は過去最多)。展示はパリで第1次大戦末期に描かれた暗い風景画から始まり、人気を博した乳白色の裸婦や南米の人々のスケッチを経て、幅5メートルを超す巨大な《南昌飛行場の焼打》から戦争画に突入。《哈爾哈河畔之戦闘》《ソロモン海域に於ける米兵の末路》《アッツ島玉砕》《サイパン島同胞臣節を全うす》あたりは比較的よく紹介されているが、末期の暗い《大柿部隊の奮戦》《ブキテマの夜戦》《薫空挺隊敵陣に強行着陸奮戦す》などは初めて見る。小磯良平や宮本三郎の戦争画は「うまいなあ」とは思うけどどこかウソっぽさが感じられるのに対して、藤田の戦争画は逆に壮大なウソっぽさに真実が秘められているようなところがある。戦争画は全26点中14点だから5割強だが、見終わってみれば9割方が戦争画に占められていたような錯覚に陥るほど圧倒的な存在感を放っている。それはサイズが大きいこともあるが、なにより白の多い20年代とは違って画面が濃密であり、また描かれた目的が明確であるからだろう。にもかかわらず小磯や宮本とは違って、自虐的とも反戦的とも受け取られかねない多義的な読みを許す曖昧さがある。この一筋縄ではいかないぬえのような多面性こそ藤田たるゆえんだろう。

2015/12/01(火)(村田真)

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