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artscapeレビュー

レオナルド・ダ・ヴィンチ──天才の挑戦

2016年02月15日号

会期:2016/01/16~2016/04/10

江戸東京博物館[東京都]

タブローが1点でもあればその人の名を冠した展覧会が成立するのは、フェルメールとレオナルド・ダ・ヴィンチくらい。それだけ寡作で貴重で、しかも人気が高いということだ。いま六本木で開かれてる「フェルメールとレンブラント」展でもフェルメールは1点のみ。レオナルドの展覧会でも、2007年には《受胎告知》、2012年には《ほつれ髪の女》、2015年には《アンギアーリの戦い》といったように、それぞれ1点ずつで成り立ってきた。で、今回は《糸巻きの聖母》。レオナルドのなかでもマイナーな、真筆にしてもかなり加筆修正が加えられているとしか思えない作品だ。空気感としては《聖アンナと聖母子》に近いが、前景の聖母子と背景の描写が合っておらず、まるで切り貼りしたような印象を与える。この《糸巻きの聖母》も含めて、同展にはレオナルドの《岩窟の聖母》や《洗礼者聖ヨハネ》などのコピーも多数出ているので、ちょっとした「偽レオナルド展」としても楽しめる。これだけコピーをつくられた画家も少ないのではないか。偉大な芸術家の証だろう。ちなみにレオナルドの手稿もいくつか出ているが、一部はファクシミリ版(コピー)なのに気づかない人が多い。

2016/01/29(金)(村田真)

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