2018年10月15日号
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artscapeレビュー

トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー「Trisha Brown: In Plain Site」

2016年04月15日号

会期:2016/03/19~2016/03/21

京都国立近代美術館 1階ロビー[京都府]

「KYOTO EXPERIMENT 2016 SPRING」公式プログラム観劇6本目。
トリシャ・ブラウンの初期作品群をオムニバス形式で上演する本作。(90年代に発表された1作品を除き)1973年~1983年の約10年間のエッセンスを凝縮したプログラムが、京都国立近代美術館の1階ロビーにて上演された。数分~10分ほどの小作品が計13個、吹き抜けの階段や天上高のあるロビー、10mほどの壁など、開放感ある空間の中で移動しながら上演される。客席はなく、観客もまた移動しながら鑑賞する。
白が基調の空間に、白に統一された衣装のダンサーたちは、ニュートラルで幾何学的に構成された振付を淡々と繰り返す。だが、水平/垂直、直角や斜線、並列の正面性/向き合った左右対称性など身体の向きの変化、フォーメーションの変化、空間との関係性など、さまざまなバリエーションを加算的に加えていくことで、運動の見え方は複雑に変化する。また、幾何学的に分節化された単位の反復がズレをはらむことで、ダンサーの従事する運動そのものは変化しなくても、観客の知覚の方が変容する。ミニマルで抑制の効いた振付と構成の明晰さが、そのことをより際立たせる。一方で、45度に傾けた棒の角度をキープしながら、頭や爪先など支える身体部位を入れ替える、横倒しにしたダンサーの身体を数人で支えながら、壁=90度回転した床であるかのように歩かせるなど、空間を身体で測定していくような試みもなされる。作品はいずれも、数理的な構成や幾何学的な厳格性において徹底しているが、同時にユーモアをたたえ、ボーカル入りの楽曲の使用とあいまって、とても軽やかだ。
(メディウムとしての)身体の即物性、分節化された単位への還元、単位の反復とズレによる知覚の変容など、ミニマル・アートとの共通性。制度的空間であると同時に物理的スケールに規定されたミュージアムの空間、その中で特権的な眼差しとして振る舞いながらも、身体的存在であることから逃れられない私たち観客。そして、通常は「物質的」存在である芸術作品を収集・保存・展示する美術館において、テンポラルでエフェメラルな「舞台芸術」の「再演」を行なうこと。本作の上演は、約30~40年前のブラウンの諸作品の単なる回顧にとどまらず、生成された時空間の限定性から切り離されたかたちで「作品」を収集・提示する「美術館」の制度性を浮き彫りにするとともに、再生装置としての可能性をも示唆する。「美術館」の空間で上演されることの(複数の)意義が、十分に感じられた公演であった。

トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー「Wall Walk(from Set and Reset, 1983) 」
レンバッハハウス(ミュンヘン)、ダン・フレヴィンギャラリー 2014
(c) Städtische Galerie im Lenbachhaus und Kunstbau München

2016/03/20(日)(高嶋慈)

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