artscapeレビュー

MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事

2016年04月15日号

会期:2016/03/16~2016/06/13

国立新美術館[東京都]

内覧会の前に安藤忠雄、ジャック・ラングらそうそうたる来賓のあいさつが続き、ようやく終わったと思ったら、招待客が多すぎて入るまで20分くらいかかった。美術展には珍しいことで、一生さんの人気と底力を見せつけられる。ちなみに女性の招待客はやはりプリーツ姿が目立ち、華やか。でもね、入ったらわかるけど、展示品と見比べられちゃいますよ。さて、最初のギャラリーはランウェイを思わせる細長い空間で、段ボール製のマネキンに初期の70年代の実験的な(いつも実験的だが)ドレスやジャンプスーツなどが一列に並べられている。次のギャラリーでは、アクリル製のマネキンに80年代のプラスチックボディやワイヤーボディが展示され、ぐるっと回ると仕切りのない広大なギャラリーに出る構成。ここではさまざまなパターンの「プリーツ」シリーズをはじめ、「一枚の布」から発想された「A-POC」シリーズ、折り畳まれた布から服が立ち上がる「132 5. ISSEY MIYAKE」シリーズなどが紹介されている。会場の一画にプレス機を持ち込んで、グラフィックデザイナー田中一光とコラボしたプリーツの製作過程も見られる仕掛け。三宅一生の根本的な問いは、「三次元である身体を二次元の布でいかにして包むか」というもの。これは「三次元の世界を二次元の平面にいかにして表わすか」という絵画の根本問題にも通じ、ここから「一枚の布」というコンセプトが導き出される。そこに(身体の)動き=時間を加えることで、一生ならではのユニークな服が展開されていくのだ。服を「一枚の布」に還元し、服の概念を問い直し続けるという意味で、三宅一生の服は最良のミニマル・アートであり、コンセプチュアル・アートでもあるだろう。

2016/03/15(火)(村田真)

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