2018年10月15日号
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artscapeレビュー

中村一美個展

2016年04月15日号

会期:2016/03/08~2016/04/02

カイカイキキギャラリー[東京都]

作品は計13点。とりあえず「絵巻」シリーズとそれ以外に分けてみる。「絵巻」シリーズは、絵具たっぷりの斜線が勢いよく何本も引かれた「斜行グリッド」と呼ばれるパターンで構成されたもので、その斜行グリッドの影のようなイリュージョナルな薄い線まで入っている。淡い藤色や薄もえぎ色の背景色といい、絵巻の建物の描写を思わせる斜めの平行線といい、いかにも日本的なデザインだ。これはある意味わかりやすいし、スーパーフラットにも通じるし、比較的多くの人に受け入れられるだろう(中村の作品のなかでは)。それに対して、それ以外の、例えば《北奥千丈VI》などは、絵具をベタベタ塗りたくった表現主義的な抽象だが、画面は混乱しているし、色彩も美しくないし、失敗作と見られかねない作品だ。それなのになんでこんな作品も入れたのかといぶかしく感じたが、その一方で、ひょっとして、この違和感こそ狙いだったのかもしれないと思ったりもした。リーフレットのコメントによれば、この違和感を中村は「不協和音」と呼び、まさに「私の意図するところ」という。この「不協和音」がすばらしいのではない。「不協和音」を恐れぬ勇気がすばらしいのだ。

2016/03/30(水)(村田真)

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