2018年10月15日号
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artscapeレビュー

森山大道「裏町人生~寺山修司」

2016年04月15日号

会期:2016/02/05~2016/03/27

ポスターハリスギャラリー[東京都]

森山大道と寺山修司の関係は、1960年代後半にさかのぼる。森山の畏友の中平卓馬が編集を担当していた『現代の眼』で初の長編小説「あゝ、荒野」を連載していた寺山は、1966年に同書を単行本化するにあたって、表紙の撮影を森山に依頼する。寺山、中平とともに新宿界隈の一癖も二癖もある住人たちをモデルに撮影された集合写真だ。これをきっかけとして、二人の関係はさらに深まり、森山のデビュー写真集『にっぽん劇場写真帖』(室町書房、1968)には寺山が書き下ろしの戯文調の散文詩「芝居小屋の外で観た地獄の四幕」と「新宿お七 浪花節」を寄せることになる。この時期の森山にとって、兄貴分の寺山の影響力は絶大なものがあり、その引力に引きつけられるように、写真表現の深みに降りていこうとしていたといえるだろう。
今回、ポスターハリスギャラリーの笹目浩之と、デザイナーの町口寛の企画で開催された「裏町人生~寺山修司」展は、絶版になっていた寺山のエッセイ集『スポーツ版 裏町人生』(新評社、1972)をもとに森山自身がプリントした写真群から組み上げられたものだ。同時に、町口の装本・デザインで写真集『Daido Moriyama: Terayama』(MATCH and Company)が刊行された。こちらは森山の写真に「拳闘」、「競輪」、「相撲」、「競馬」、「闘犬」をテーマにした寺山の文章の断片を、コラージュ的に組み合わせている。『にっぽん劇場写真帖』、「何かへの旅」などの初期シリーズを中心とする森山の写真と、寺山の湿り気を帯びつつ疾走するテキストとの相性は抜群で、展示も本も見応えのある出来映えに仕上がっていた。町口のデザインワークも、いつもながら、60年代末の気分を見事にすくいとっている。森山と寺山のコラボレーションは、これから先もまだいろいろな可能性を孕んで展開していそうだ。

2016/03/02(水)(飯沢耕太郎)

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