2018年04月15日号
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artscapeレビュー

西村裕介「The Folk」

2016年04月15日号

会期:2016/03/03~2016/04/02

IMA gallery[東京都]

先月、銀座メゾンエルメスフォーラムでフランスの写真家、シャルル・フレジェの「YÔKAÏNOSHIMA」の展示を見たばかりだったので、同じようなテーマの写真展が続けて開催されたのが興味深かった。とはいえ、西村裕介のアプローチは、フレジェとはかなり違っている。
映画製作から写真に転じ、主に雑誌や広告の分野で活動している西村は、3年半ほど前に明治神宮の祭事で郷土芸能を見て、その力強さに衝撃を受ける。それから北海道から沖縄まで全国を回り、「現場に黒幕を張り、演者の姿を封じ込める」という手法で撮影を続けてきた。開放的な雰囲気で、どちらかといえばクールに、衣装やマスクを中心に撮影しているフレジェと比較すると、西村は「猛々しい迫力」を発する演者の所作に強い関心を寄せているように見える。黒バックで、ストロボに照らし出されて浮かび上がってくるダイナミックな動きの表現は、たしかに魂を震わすようなパワーを感じさせる。ただ、黒バックの「封じ込め」は諸刃の剣でもある。周囲とのつながりを欠くために、ドキュメントとしての情報量が限定され、各行事がむしろ均一なものに見えてしまうのだ。
このような祭礼や民間行事への関心の深まりは、もしかすると東日本大震災以後の状況ともかかわりがあるのかもしれない。震災以後、家族や共同体との「絆」がクローズアップされる中で、郷土芸能を受け継いでいくことの意味があらためて問い直されつつあるのだ。ただ、単純なアリバイづくりでは物足りない。むしろ、民衆の自発的なエネルギーの発露としての芸能の起源に着目していかなければならないだろう。

2016/03/03(木)(飯沢耕太郎)

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