artscapeレビュー

コミュニタス・サリハラほか

2016年04月15日号

[インドネシア、ジャカルタ]

コミュニタス・サリハラは、民間のアート複合施設である。ANDRAによる事務棟、Adi Purnomoのフレキシブルな小劇場、Markoの円形のギャラリー、そして案内していただいたDanny Wicaksonoの複合施設が、立体的に連結しながら、それぞれのデザインの個性を発揮している。Dannyが手がけたのは4番目に完成したもので、従業員の居住棟、そしてダンスや音楽の練習や録音のスタジオ、レジデンスなどを縦に積む。階段やエレベータなど、上下の動線を完全に外部化するという思い切った工夫がなされていることに驚かされた。複雑な規制から導かれたデザインだが、暖かい気候だからこそ可能なゆるやかな空間である。隣棟とは屋上庭園も連結していた。3日目の最後は、Andra Matinが最初に手がけたプロジェクト、リノベーションによるギャラリー、カフェ、デザイン・オフィス、店舗の複合施設を訪れた。ここでも完全に閉じない、すなわち隙間が許される空間のあり方が自由でうらやましい。インドネシアの政治が変わった象徴的な1998年に誕生し、アートや建築の新しい運動に大きく貢献した歴史的な場所でもある。

写真:左=上から、サリハラ概観、Andra Matinによる事務棟、Adi Purnomoによる小劇場、右列=Dannyによる複合施設

2016/03/28(月)(五十嵐太郎)

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