2018年01月15日号
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artscapeレビュー

福岡道雄展「ことばと文字─つくらない彫刻家のその後」

2016年05月15日号

会期:2016/04/01~2016/04/28

ギャラリーほそかわ[大阪府]

「ピンクバルーン」の彫刻シリーズや、黒い立方体の上面に波打つ水面や小舟の彫刻を施した作品群、FRPの板に「何もすることがない」「僕達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか」などの一文をびっしりと刻みつけた平面作品で知られる福岡道雄。2005年の個展を最後に「つくらない彫刻家」宣言をしてからは、制作を絶っている。
本展では、制作を絶ってからの福岡が近年書きためた断片的な文章やドローイングが、数十枚展示されている。日々の雑感を書きとめた、日記の一部のような文章。脳内制作のコンセプトを練る、メモ書きのようなもの。小さな「つぶ」として存在する作品の見せ方についてのアイデアスケッチ。「生きろ馬鹿な生きろ馬鹿な……」の反復が、渦巻き状に沿って呪文のように書かれたもの。「何もすることがない」の執拗な反復は、今回のドローイングメモにも現われ、脅迫的な制作衝動をパラドキシカルに露わにする。
それらの大半は、スケッチ帳やメモ帳からちぎり取られ、裏面にも何かが書かれた紙片も多い。今回展示されたものの背後には、日々即興的に書きためられた膨大な紙片が存在するのだろうと思わせる。それらは、実体はなくとも、「作品」や「つくること」の周囲を旋回しながら、作家の思考の連続性と不連続な断片を垣間見せている。慎ましやかながらも、作品と非─作品を峻別する境界、「作家の純粋な思考は作品と等価と言えるのか」という問いを投げかけていた。

2016/04/16(土)(高嶋慈)

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