2018年04月15日号
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artscapeレビュー

仙谷朋子「Life」

2016年05月15日号

会期:2016/04/01~2016/04/30

nap gallery[東京都]

仙谷朋子は1975年生まれ、東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業後、同大学院美術研究科を2000年に修了し、主に写真作品を中心に発表している。今回のシリーズは、勤務先の東海大学の海洋調査船に乗り組んで、39日間を赤道直下の南太平洋で過ごした体験を元にしたものだという。つまり「海の上のlife」というわけだ。
僕も多少は経験があるが、船の上では地上とはまったく異なる身体感覚を味わうことができる。つねに足元が揺れ動いている不安定な状況は、視覚や聴覚を狂わせ、精神的にも大きな変動をもたらすだろう。仙谷にとっても、その体験はひどい船酔いも含めて相当に強烈なものだったようだ。だが、あまりにも「キョーレツでありキツかった」ために、2012年のその航海の体験を作品化するにはかなりの時間がかかってしまった。逆にいえば、それだけ時間をかけて熟成したからこそ、クオリティの高いシリーズに仕上がったのではないかと思う。
展示作品は全9点。海面のイメージに球体をフォトグラムの手法で焼き付けた大作、「架空の南半球の星座」を構成した作品、船窓を思わせる円形の画面に海と鳥のイメージを封じ込めた作品から成る。「海の上のlife」を直接的に(ドキュメント的に)再現したものではないが、個人的な体験を普遍的なそれへと昇華することによって、なかなか味わい深い、非日常のなかの日常の手触りが感じられるようになっていた。「life」というテーマは、さらにいろいろなかたちで変奏できそうな気がする。ぜひ、このシリーズの続きを見てみたい。

2016/04/07(木)(飯沢耕太郎)

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