2018年07月15日号
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artscapeレビュー

「マグナム・ファースト日本展」

2016年05月15日号

会期:2016/04/23~2016/05/15

ヒルサイドフォーラム[東京都]

マグナム・フォトはロバート・キャパ(ハンガリー)、アンリ・カルティエ=ブレッソン(フランス)、デイヴィッド・シーモア(ポーランド)を中心に1947年に設立され、「写真家による写真家のための写真エージェンシー」として、現在に至るまで強い影響を及ぼしてきた。本展は、初期マグナムの活動を支えた8人の写真家たちの作品83点によって、オーストリアの5都市で1955年に開催された「時の顔(Face of Time)」展を再構成したものである。この展覧会の出品作は、その後行方がわからなくなっていたのだが、2006年になってオーストリア・インスブルックのフランス文化会館の地下室から、全作品が発見され、「マグナム・ファースト」展として世界中を巡回することになった。マグナムの草創期のヴィンテージ・プリントを、まとめてみる機会はめったにないので、それだけでも貴重な展示といえる。
本展の出品作家は、創設メンバーのキャパ、カルティエ=ブレッソンに加えて、ワーナー・ビショフ(スイス)、エルンスト・ハース(オーストリア)、エリック・レッシング(同)、ジャン・マルキ(フランス)、インゲ・モラス(オーストリア)、マルク・リブー(フランス)の8名。展示された作品を見ると、第二次世界大戦終結から10年というこの時期に、「報道写真」の理念が写真家たちのバックボーンとなっていたことがよくわかる。例えば、のちに「決定的瞬間」の美学を確立していくカルティエ=ブレッソンにしても、まぎれもなくフォト・ジャーナリストの視点で、インドのガンジー暗殺の前後を記録した一連の写真を出品している。それぞれの写真家の代表作として知られている作品だけでなく、若々しいエネルギーを発する初期写真が多数展示されているのが興味深かった。そのなかでも特に印象に残ったのは、会場の最後に並ぶワーナー・ビショフの、堂々とした風格を備えた写真群である。1954年、ペルー取材中に自動車事故で悲劇的な死を遂げた彼の写真を、あらためて再評価する時期に来ているのではないだろうか。

2016/04/30(土)(飯沢耕太郎)

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