2018年06月15日号
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artscapeレビュー

川村悦子展──ありふれた季節

2016年08月01日号

会期:2016/06/11~2016/07/31

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

京都を拠点に活躍する洋画家・川村悦子の個展。1980年に京都市立芸術大学西洋画専攻科を修了後、イタリア古典絵画への憧憬を通して西洋と東洋美術の位相について問いかけながら、絵画における現実と虚実性や、自然をテーマに制作活動を展開してきた。本展の展示では、最新の連作《ありふれた季節》を含め40点余りの全作品に、作家のそれらの思いを感じ取ることができる。最新作では、一見どこにでもありそうな公園なのに、作家の記憶にまつわる視覚的フィルターを通したかのように、靄がかかったかのような独特な油彩画の表面で仕上げられる。写実的な木々の描写と周辺には、特別の空気を纏った心象風景が浮かびあがる。《道》と題された作品には、鬱蒼とした木々の茂みに挟まれた橋が描写される。画面奥に収れんする、ありふれた橋の向こう側には何があるのか。私たちの眼と頭は、実体験の記憶にある風景と、画面に表現される仮想の現実の風景のあいだをさまよう。代表作の「蓮」を描いた作品群は、遠くから見れば写真のような写実性をもつのに、近くに寄って見ればうっすら白く優しい絵肌となる。蓮の葉の強い生命感に、水の気配や空気までも感じられるようだ。《白椿》は、陶器タイルの硬質な表面に描かれたかのような味わい。自然へのあたたかなまなざしと絵肌の透明性に魅了された。[竹内有子]

2016/07/03(日)(SYNK)

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