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学業から職業へ ─京都高等工芸学校と京都市立美術工芸学校の図案教育III─

2016年08月01日号

会期:2016/06/20~2016/08/08

京都工芸繊維大学美術工芸資料館[京都府]

本展は、「浅井忠・武田五一と神坂雪佳 ─京都高等工芸学校・京都市立美術工芸学校の図案教育I─」(2014)、「“倣う”から“創る”へ ─京都高等工芸学校と京都市立美術工芸学校の図案教育II─」(2015)に続く連続展覧会企画の第三回。大正から昭和初期の京都の図案教育の成果として、京都高等工芸学校と京都市立美術工芸学校図案科の学生作品である、着物、ポスター、家具、住宅等のデザイン、33点が、学業が職業につながり結実した成果として、両校の卒業生や教員によるデザイン、29点が展示された。学生作品といっても充分な描写力や創造性が認められるものばかりだが、やはり卒業生や教員の作品にはプロらしい精確さや緻密さが感じられる。なかでも、村野藤吾(1891-1984)が手がけた貨客船「橿原丸」平面図と本野精吾(1882-1944)が手がけた「出雲丸」内観パース、高島屋大阪店による「橿原丸」と「出雲丸」の室内設計案は技術という点だけでも圧倒的だ。
京都市立美術工芸学校(現京都市立芸術大学)は、日本初の公立画学校として創立し1891年に京都市美術学校と改称すると同時に工芸図案科を設けた。京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)は、東京高等工業学校(1901年東京工業学校から改称)に次いで1902年に創立した旧制専門学校。いずれも近代日本を牽引したデザイン教育機関である。その活動の一端を明らかにする一連の展覧会は、日本のデザイン教育史構築においても意義深い展覧会といえるであろう。[平光睦子]

2016/07/09(土)(SYNK)

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