2018年10月15日号
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artscapeレビュー

オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ

2016年08月01日号

会期:2016/06/29~2016/08/28

サントリー美術館[東京都]

今年初めに東京都庭園美術館と宇都宮美術館を巡回するエミール・ガレの展覧会が開催されていたばかり。国内には北澤美術館など、ガレの作品を常設展示している美術館も多く、ガレの展覧会は頻繁に開催されている印象がある。サントリー美術館もガレの優品をコレクションする美術館のひとつだが、意外にも同館でのガレ展は8年ぶりだという。本展にはオルセー美術館が所蔵するガレのデッサンなども出品されており、充実した内容。余談だが、出品作品のひとつ、花器「アイリス」(1900年頃)は、ダルビッシュ有氏の父ダルビッシュセファット・ファルサ氏のコレクション。サントリーミュージアム天保山でガレ作品に出会って以来始めたコレクションのひとつで、今回初公開なのだそうだ。
最初に展示されているのはガレ最晩年の作品・脚付杯「蜻蛉」(1903-04)。大理石を思わせるマーブルガラスの杯に、ガレが好み、繰り返しモチーフに用いた蜻蛉の浮き彫りをあしらった器は、白血病による死を予感したガレが近しい友人・親戚に送ったものだという。展覧会ではこの作品をガレの到達点と位置づけて、ガレの仕事が「究極」に至った道程をその生涯における関心、関わりに従って「祖国」「異国」「植物学」「生物学」「文学」をテーマに全5章で構成している。このうち植物学・生物学という視点は、ガレに限らずアール・ヌーヴォーの作家たちに共通するテーマであり、これまでにもさまざまな展覧会で見ているが、祖国・異国・文学との関わりは、ガレの作品をかたちづくった背景として、とても興味深い。とくに第2章「ガレと異国」には、ガレが日本美術・中国美術から影響されてデザインした異国趣味の作品が並ぶほか、ガレの旧蔵品である中国の鼻煙壺、日本の陶磁器──宮川香山の作品もある──などが出品されており、東西の美術工芸品が並ぶことでその影響関係と様式の同時代性を見ることができる。北澤美術館初代館長・北澤利男氏は「ガレのガラスと初めて出会った時、これは日本画ではないかという強い印象を受け」たと書いている。日本人のガレ好きの背景には、このような東洋美術・日本美術との親和性があるのだろう。会場最後の作品はランプ「ひとよ茸」(1902年頃)。一晩でカサが開き、軸を残して溶けてしまうというヒトヨタケをモチーフにした巨大なランプは、器の表面に施される比較的平面的な装飾から、装飾と構造、造形の一体化へと発展していったガレ作品の「究極」のひとつ。ここでガレの物語は展示の最初に示された到達点とつながる。
3階吹き抜けでは、ガレのサインのヴァリエーションが紹介されている。ガレは年代別ではなく、作品のイメージに合わせてサインのスタイルを使い分けていたという。器と、器のサイン部分を接写したポジフィルムのベタ焼きを並べた展示構成は秀逸。オルセー美術館所蔵のデザイン画とサントリー美術館所蔵の作品写真を半分ずつ構成したチラシのデザインも印象的だ。[新川徳彦]


展示風景

★──『アール・ヌーヴォーのガラス 北澤美術館コレクション』(光村推古書院、1994)(花井久穂「日本のガレ受容をめぐる三つの種子──『日本人のガレ好き』はいつから始まったのか?」、『ガラスの植物学者 エミール・ガレ展』茨城県陶芸美術館、149頁)。

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2016/06/28(火)(SYNK)

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