2017年12月15日号
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artscapeレビュー

感覚のあそび場─岩崎貴宏×久門剛史

2016年08月15日号

会期:2016/07/26~2016/09/11

京都芸術センター[京都府]

日用品を解体・再構築して繊細なオブジェをつくり、見立てを駆使して意味やスケール感の転倒をはかる岩崎貴宏と、音や光といった現象をモノや空間と組み合わせ、時空間をそっと揺さぶるようなインスタレーションを手がける久門剛史の2人展。
岩崎の《アウト・オブ・ディスオーダー(コラプス)》は、綿棒、歯ブラシ、タオル、モップなど「白い清掃用具」を組み合わせて、植物が生い茂る野原の中に「壊れた送電塔」が佇む風景のジオラマをつくり上げている。不気味な樹海のように繁茂する植物群、壊れて放置されたままの送電塔…。福島第一原発周辺地域を否応なく連想させるこの風景は、病的な白さで覆われている。その「白」は、原子力エネルギーの「クリーンさ」への皮肉とも、「汚染の除去」を待つ土地への示唆とも受け取れる。また、壁面に展示された《コンステレーション》は、一見すると、夜空にきらめく無数の星の美しい写真に見えるが、白い光の粒をルーペで拡大して見ると、コンビニやファーストフード店、クルマのメーカー、大手小売チェーン店の極小のロゴが混ざっている。小麦粉やベビーパウダーがバラ撒かれてできた一つひとつの点は、民家の灯りだろうか。「夜の日本」を上空から俯瞰した電力消費図が、極めて美しい星空の光景とのダブル・イメージとして重ね合わせられている。
一方、久門の《after that.》は、鏡面でできた時計盤を何十個も組み合わせてミラーボールを形づくり、光の反射が空間全体に乱舞する幻想的なインスタレーション。動かないはずの部屋そのものが回転し、あるいは足元の床がぐるぐると回っているような錯覚に全身が包まれる。また、和室を使った《Quantize #6─明倫小学校 和室─》では、ライトの明滅や、雨音や鈴虫の鳴き声などの音響的仕掛けが施されることで、室内/外の境界や時間感覚を撹乱させ、空間内に独自のリズムが息づいていく。
見立てや擬態といった空想的な手法によって、電力の消費という問題を日常生活へ直結させる岩崎と、「いまここ」の確かさを揺るがし、複数の知覚的現象へと開いていく久門。想像力のそれぞれのありようが対照的に示された展示だった。

2016/07/31(日)(高嶋慈)

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