2017年12月15日号
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artscapeレビュー

サイ・トゥオンブリーの写真 ─変奏のリリシズム─

2016年08月15日号

会期:2016/04/23~2016/08/28

川村記念美術館[千葉県]

スクールの生徒たちと美術館見学。目的はステラの絵画とロスコ・ルームだが、サイ・トゥオンブリーの写真展もやってるので、あまり気が進まないけどせっかくだから見てみる。これが期待はずれに(?)よかった。当初気が進まなかったのは、トゥオンブリーはリヒターみたいに写真に連動した絵を描くわけではないので、写真には興味が持てなかったからだ。でも見てみたら、これが実になんというか、ストライクゾーンが狭いというか、ツボに見事にハマる写真だった。被写体はモランディのような数本の瓶だったり、古代遺跡だったり、部屋の片隅だったり、絵や彫刻の一部だったり、花のクローズアップだったり、とりとめのないものばかりで、生身の人間はまったく登場しない。ポラロイドで撮影されてるためか(展示作品は拡大したドライプリント)、ブレたり焦点が合わなかったりするものが多く、一見なんでこんなものを、こんなふうに撮っているのか理解しにくいが、同時に「好き」か「嫌い」かでいえば明らかに「好き」な写真であることに間違いない。ではなんで好きなのかというと、好きなモチーフとか奇抜な構図とかを狙っているからではなく(いや好きなモチーフもあるが)、四角い画面になにかが写るという意味で「写真」を撮っているからだ。説明を必要としない写真というか、弁解のない写真というか。もうそのまま「写真」。こういう写真は撮ろうと思って撮れるものではない。その困難さを絵にたとえれば、まさにトゥオンブリーの絵画になる。描こうと思って描ける絵ではないからだ。ああ見てよかった。写真100点のほか、絵画と彫刻約30点も加えた展示。

2016/07/17(日)(村田真)

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