artscapeレビュー

竹岡雄二 台座から空間へ

2016年08月15日号

会期:2016/07/09~2016/09/04

遠山記念館[埼玉県]

本命の竹岡雄二作品は、広大な、というより廊下で細長くつながった屋敷内5カ所と庭に1点、置かれている。土間にガラスの容器で覆われた金属板、正方形の和室に白い立方体、縁側にブロンズ板の両端を内側に湾曲させた台座、庭に高さ130センチほどの石柱、などだ。20世紀に彫刻から台座が失われた理由は、作品自体が抽象化して台座との差異化がつかなくなったことのほかに、彫刻作品が美術館で鑑賞されるようになったからでもある。もともと台座は現実空間と彫刻とのあいだのクッションの役割を果たしていたが、美術館のとりわけホワイトキューブの展示室は、それ自体が現実空間とは隔絶した台座の役割を果たすからだ。だから美術館で見た竹岡の「台座」は、一種のミニマル彫刻として立ち現われたのだ。では、もう人が住んでいないとはいえ、この現実空間の屋敷内に置かれた「台座彫刻」はどのように見えただろう。意外なことに(いや当然のように、というべきか)美術館以上に作品としての存在感を主張するように感じられたのだ。それはおそらく空間的に開けた和風建築だからかもしれない。これが隙間のない密閉された洋風建築だったらまた違う印象を与えたはずだ。いやあ苦労して見にきてよかった。

2016/07/18(月)(村田真)

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