2017年12月15日号
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artscapeレビュー

浅田政志写真展「ほぼ家族。」

2016年08月15日号

会期:2016/06/18~2016/08/04

入江泰吉記念奈良市写真美術館[奈良県]

昨年、写真家の百々俊二が館長になってから、奈良市写真美術館のラインナップが大幅に変わってきた。もともと入江泰吉の作品を中心に展示してきたのだが、大胆な内容の写真展を次々に開催するようになった。今回の浅田政志「ほぼ家族。」展(入江泰吉「まほろばの夏」展と併催)も、意表をついたいい企画だった。
浅田は2009年に自分自身を含む家族のパフォーマンスの記録、『浅田家』(赤々舎、2008)で木村伊兵衛写真賞を受賞してデビューする。その時点で、たしかに面白い写真には違いないが、写真家としてこの先どんな風にキャリアを伸ばしていくのかが心配ではあった。いわゆる「一発屋」ではないかと危惧していたのだ。ところが、彼はその後も次々に新しいプロジェクトを実行し、精力的に自分の作品世界を拡大しつつある。今回の展覧会では、2000年にスタートして、現在も撮り続けているという「浅田家」をはじめとして、「NEW LIFE」、「八戸レビュウ」、「アルバムのチカラ」、「卒業写真の宿題」、そして近作の「みんなで南三陸」といったシリーズが、盛りだくさんに並んでいた。
浅田の写真の特徴は、徹底して「記念写真」にこだわり続けていることだろう。「記念写真」は19世紀以来、写真撮影のもっとも基本的なあり方として機能してきたのだが、当事者(撮り手とモデル)にとっては重要な意味を持っていても、第三者にとっては、関係のない写真と見なされてきた。浅田の写真がユニークなのは、「記念写真」を風通しよく万人に開いていることである。綿密な打ち合わせによって「どう撮るのか」を決め、細やかな気配りで写真家とモデルとの共同作業を進めていくことで、彼の写真には観客を巻き込んでいくパワーが宿ってくる。特に東日本大震災を乗り越えていこうとする人たちを対象にした「アルバムの力」や「みんなで南三陸」を見ると、彼らを親密な「擬似家族」として撮影していく「記念写真」のスタイルが、とても有効に働いていることがわかる。

2016/07/07(木)(飯沢耕太郎)

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