2017年12月15日号
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artscapeレビュー

安田佐智種「VOID」

2016年08月15日号

会期:2016/07/04~2016/07/30

BASE GALLERY[東京都]

現在ニューヨーク在住の安田佐智種は、2012年にBASE GALLERYで開催した個展で、今回も出品された「Aerial」のシリーズを展示したことがある。その時も、高所から見下ろしたビル群をデジタル処理してつなぎ合わせた画像の、めくるめくような視覚的効果に驚嘆したのだが、それから4年が過ぎて同シリーズはさらに進化しつつある。
前回は東京、ニューヨーク、神戸で撮影された作品だったが、今回はさらにケルン、長崎、パリの眺めが加わった。高層ビルが針を植えたように林立する都市の一角を、ただ単に切り取ったというだけではなく、より地勢学的に都市全体を俯瞰する視点があらわれてきている。また、撮影の足場になる地点が「空白(VOID)」のスペースとして表示されるのが、今回の展示のタイトルの由来なのだが、そのポイントの選び方(例えば東京スカイツリーやエッフェル塔)にも配慮が行き届いている。
さらに今回の展示で重要なのは、「Aerial」のシリーズのほかに、東日本大震災の被災地で撮影された「Michi」と題する作品も出品されていることだろう。福島県南相馬市の沿岸部の、津波で流失した家屋の土台部分を撮影した写真画像をつなぎ合わせた120×420センチの大画面の作品は、家屋自体の撤去作業が急速に進むなかで、震災の記憶を保持していくためのモニュメントとしての意味を強めつつある。2013年から制作が開始され、「今後も制作続行予定」というこの作品がどんな風に姿を変えていくのか、また「Aerial」のシリーズと、どのように関連しながら展開していくのかが楽しみだ。

2016/07/11(月)(飯沢耕太郎)

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