2017年12月15日号
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artscapeレビュー

第32回東川町国際写真フェスティバル2016

2016年08月15日号

会期:2016/07/26~2016/08/31

東川町文化ギャラリーほか[北海道]

今年も北海道東川町で「東川町国際写真フェスティバル」(通称、東川町フォトフェスタ)が開催された。もう32回目ということで、長年にわたって企画を継続してきた行政や町の方々の地道な努力に敬意を表したい。このところの充実した展示を見ると、その成果は着実に実を結びつつあるのではないかと思う。
東川町文化ギャラリーで作品展(7月30日~8月31日)が開催された第32回東川賞の受賞者たちの顔ぶれは以下の通りである。海外作家賞:オスカー・ムニョス(コロンビア)、国内作家賞:広川泰士、新人作家賞:池田葉子、特別作家賞:マイケル・ケンナ(イギリス→アメリカ)、飛騨野数右衛門賞:池本喜巳。毎回、東川賞のラインナップを見ていて思うのは、審査員(浅葉克己、上野修、笠原美智子、楠本亜紀、野町和嘉、平野啓一郎、光田由里、山崎博)が、広く目配りをしつつ、新たな角度から写真の世界を見直していこうとする人選をしていることだ。今回の受賞者でいえば、オスカー・ムニョスや池田葉子がそれにあたる。写真以外にも版画、ドローイング、映像作品、彫刻など多様な媒体で仕事をするアーティストであるムニョスの、画像や文字が水に溶け出したり、手のひらに溜まった水に自分の顔が映り込んだりする作品は、ある意味、東洋的な無常観を表現しているようでもある。池田葉子の三次元空間を、ボケや光の滲みのような写真的なフィルターを介して二次元平面に置き換えていく、多彩で軽やかな手つきもとても印象的だった。彼らのような、あまり日本では評価されてこなかった写真作家にスポットを当てていくことに、東川賞の大きな意義があると思う。
受賞作家作品展以外にも、さまざまな催しが行なわれた。そのなかでは、昨年に続いて廃屋になった商店の建物で開催された「フォトふれNEXT PROJECT」展(南町一丁目ギャラリー)が面白かった。「フォトふれ」(フォトフェスタふれんず)というのは、過去のフォトフェスタにボランティアとして参加したメンバーたちのことで、今年の展示にはフジモリメグミ、伯耆田卓助、堀井ヒロツグ、正岡絵里子が参加している。このうち正岡絵里子は、やはり今年のフォトフェスタの企画である「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション」にも参加し、グランプリを受賞した。10年間かけて、生と死のイメージを共存させた厚みのある作品世界を作り上げた正岡をはじめとして、それぞれ「NEXT」が大いに期待できそうだ。同会場では、やはり「フォトふれ」の一人で、東川町にアーティスト・イン・レジデンスで参加した石川竜一(2015年に第40回木村伊兵衛写真賞を受賞)も作品を出品していて、クオリティの高い展示空間になっていた。

2016/07/30(土)(飯沢耕太郎)

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