artscapeレビュー

岩手県各所

2016年08月15日号

[岩手県]

竣工:2012年

岩手県をまわる。各地の仮設住居や仮設商店街では、かなり役割を終え、空きが目立つところも散見される。久しぶりの田老町を訪れた。かつて街だったところに野球場が建ち、なるほど防潮堤の描くカーブに輪郭がうまく沿ってはいるが、以前は建物が建っていたことを知っていると、かなりシュールな風景だ。隣に立命館大の宗本研によるサッカーボール型の《ODENSE》が建つ。また近くでコンビニを建設中だった。そして海に散らばっていた、破壊された防潮堤のコンクリートの塊は消えている。建築としては柵に囲まれたたろう観光ホテルだけが震災遺構として、被災の痕跡を示す。もっとも、どこをどう補強して、公開しているのかが、わかりにくい。なお、近くの漁業協同組合に見覚えがあり、2011年に撮った写真を調べると、そのときと同じものが存在していた。つまり、あの津波に耐え、現在普通に使われているのだ。すごいと思うのだが、全然知られていないように思う。

写真:左=上から、仮設商店街、野球場、たろう観光ホテル 右=上から、《ODENSE》、漁業協同組合

2016/07/16(土)(五十嵐太郎)

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