2017年11月15日号
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artscapeレビュー

羽永光利アーカイブ展

2016年09月15日号

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会期:2016/07/23~2016/08/20

AOYAMA|MEGURO[東京都]

羽永光利(1933~1999)は東京・大塚生まれ。文化学院美術科卒業後、フォトグラムやデカルコマニー作品を発表していたが、1962年からフリーランスの写真家として活動し始めた。以後、雑誌等で仕事をしながら、現代美術、舞踏、演劇などの現場に密着して取材・撮影を続けた。1981~83年には、創刊されたばかりの「フォーカス」(新潮社)の企画・取材にかかわったこともあった。
アーティストたちのエネルギーが交錯しつつ、高揚していく時代の貴重な記録として、このところ、羽永の写真は国内外で大きな注目を集めつつある。昨年の「羽永光利による前衛芸術の"現場" 1964-1973」展に続いて東京・上目黒のAOYAMA|MEGUROで開催された今回の個展では、10万カットに及ぶという遺作から約450点が展示されていた。会場は「演劇」、「舞踏」、「世相」、「前衛芸術」の4部構成で、それぞれ1960~80年代撮影の写真がアトランダムに並んでいる。ハイレッドセンターやゼロ次元のパフォーマンスのドキュメントを含む「前衛美術」のパートや、土方巽、寺山修司、唐十郎などのビッグネームの姿が見える「演劇」、「舞踏」のパートもむろん面白いのだが、むしろこれまであまり発表されたことのないという「世相」のパートに注目した。「前衛芸術」の担い手たちの活動は、突然変異的に出現してきたわけではなく、それぞれの時代状況をベースにしてかたちを取ってきたことがよくわかるからだ。逆に1960~80年代の大衆社会の成立がもたらした解放感、エネルギーの噴出こそが、「前衛芸術」の活況を支えていたともいえるだろう。写真に引きつけていえば、中平卓馬、森山大道、荒木経惟、深瀬昌久らの「ラディカル」な表現のあり方は、羽永の写真に見事に写り込んでいる「世相」のエスカレートぶりと響きあっているようにも思えるのだ。
なお、羽永のアーカイブが所蔵する写真1000枚を収録した文庫版写真集『羽永光利 一○〇〇』(編集・構成、松本弦人)の刊行が決定したという。内容と装丁とがぴったり合っているので、出来映えが楽しみだ。

2016/08/04(飯沢耕太郎)

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