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artscapeレビュー

サイ・トゥオンブリーの写真 ─変奏のリリシズム─

2016年09月15日号

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会期:2016/04/23~2016/08/28

DIC川村記念美術館[千葉県]

会期終了間際になって、ようやくサイ・トゥオンブリー展に足を運ぶことができた。これまでにも彼の写真作品は断片的には展示されたことがあるものの、これだけの規模の展示を見ることができるのは、まさに嬉しい驚きといえる。DIC川村記念美術館の会場には、初期から最晩年に至る写真作品100点のほか、絵画、彫刻、ドローイング、版画の代表作も並んでいた。
トゥオンブリーが写真作品を制作し始めたのは、1951年にノースカロライナ州のブラック・マウンテン・カレッジで、写真家のヘイゼル・フリーダ・ラーセンのピンホールカメラの授業を受けたことがきっかけだったようだ。つまり、絵画やドローイングとともに、ごく初期から視覚的な探求のメディアとして写真を意識しており、その後も断続的に作品制作は続けられていた。だが、それがまとまったかたちで展開されていくのは、1980年にポラロイド写真を使い始めてからである。今回の展示の中心になっているのは、ポラロイドで撮影したプリントを、複写機で2.5倍ほどの大きさに拡大し、さらにそれらをフレッソン・プリントやカラー・ドライプリントで、ややざらついた手触り感のある画面に仕上げた写真群だ。花、野菜、自作の絵画や彫刻などのクローズアップのほか、墓地や海辺の光景なども被写体になっている。どうやら、何を写すかよりも、そこにある事物が、写真、複写、プリントなどの操作を経ることで、どのように変容していくかに強い関心を抱いていたようだ。ここにも、トゥオンブリーの絵画やドローイング作品とも相通じる、「ものの流転」(things in flux)へのこだわりがあらわれている。写真をもうひとつの視覚として使いこなしていくことへの歓びが伝わってくるいい展示だった。
個人的には、以前から見たかった版画集『博物誌1 きのこ』の全作品が出品されていたのが嬉しかった。作品そのものに内在する偶発性、魔術性、多様性から見て、トゥオンブリーがきのこに強い親近感を抱いているのは間違いない。そういえば、彼の写真作品も、どことなく増殖するきのこの群れのように見えなくもない。

2016/08/06(飯沢耕太郎)

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