artscapeレビュー

現代日本のパッケージ2016

2016年10月01日号

会期:2016/09/17~2016/11/27

印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]

第55回ジャパンパッケージングコンペティション(一般社団法人日本印刷産業連合会主催)、2016日本パッケージングコンテスト(公益社団法人日本包装技術協会主催)の受賞作品、および『JPDAパッケージデザインインデックス2016』(公益社団法人日本パッケージデザイン協会刊)から選ばれた作品による、最新のパッケージの数々が並ぶ展示。
私たちが日々購入する商品はなんらかのパッケージによって梱包されている。人々はパッケージのデザインによって目当ての商品を見つけ、あるいはパッケージのデザインによって新たな商品の存在を知る。パッケージには店頭で消費者に商品を手に取ってもらうためのさまざまな工夫、仕掛けがなされている。パッケージデザインに求められるのは、プロモーションとしての要素だけではない。開封・密封のしやすさなど使い勝手の改良や、環境に配慮した簡易包装やリサイクルしやすい素材の使用など、そこには解決すべきさまざまな課題があり、それに対する回答、進化の姿を見ることができる。例えば、ヱスビー食品の和風香辛料改良キャップ(2016日本パッケージングコンテスト・アクセシブルデザイン包装賞)は、旧キャップが数回転させなければならなかったのに対して、改良キャップは2分の1回転でカチッという音がして密封される。表面的には新旧の違いは分からない。日清クッキングフラワー(ジャパンパッケージングコンペティション・経済産業省製造産業局長賞)は小型のボトルで、蓋の半分には穴が開いて調理素材に振りかけることができ、もう半分には計量スプーンが入る穴が開いており、2通りの方法で少量の小麦粉を使いやすいよう工夫されている。資生堂・クレ・ド・ポー ボーテ ラ・クレーム(2016日本パッケージングコンテスト・アクセシブルデザイン包装賞)は、レフィルによって樹脂使用量を約73%削減しているという。カットグラスのような本体の美しさと、交換作業が容易なレフィルの構造、素材使用量の削減という複数の課題に同時に応えたパッケージデザインだ。
『JPDAパッケージデザインインデックス2016』からは、シズル表現をテーマにセレクトしたパッケージが並ぶ。シズル感といえば、内容物のみずみずしさなどをヴィジュアルで表現することが一般的だが、ここでは写真やイラスト以外に、文字や形態によってシズル感を表したパッケージが並び、その表現の多様性にとても新鮮な印象を受けた。
新旧パッケージを並べて改良点を示すなど、展示はとても分かりやすい。デザインに関わる者はもちろんのこと、一般の消費者にも有用な展覧会だ。パッケージデザインにどのような工夫がされているのかを知れば商品を選ぶ目線が変わる。消費者の目線が変わればパッケージデザインはさらに進化するはずだ。[新川徳彦]

2016/09/16(金)(SYNK)

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