artscapeレビュー

人づくりプロジェクト展2016 「あたらしいケシキ」

2016年11月01日号

会期:2016/10/13~2016/10/18

AXISギャラリー[東京都]

商業施設、博物館、展示会などの空間のデザインと施工を手がける丹青社では、毎年、デザイン専門職以外も含むすべての新入社員が外部のクリエイターや職人たちと協働してひとつのプロダクトをつくりあげる課題を課しているという。本展はこの新入社員育成プログラム「人づくりプロジェクト」の成果展。最初にクリエイターが新入社員に対してプロダクトのコンセプトをプレゼンするところからはじまり、それをふまえて新入社員2、3人ずつのチームに分かれ、クリエイターと協働する。制作期間や制作費などの制約のなかでクリエイターたちのコンセプトを具体化し、協力会社の助けを得てひとつのプロダクトに仕上げる。会場に並んだプロダクトはいずれも非常に完成度が高い。個人的には鈴野浩一(トラフ建築設計事務所)と協働した「DOZO BENCHI(ベンチ)」、橋本潤(フーニオデザイン)の「Swinging String(テーブル)」に魅力を感じた。完成度が高い理由は、これが教育目的のプロトタイプにとどまらず、市販も視野に入れた本気のものづくりだからだ。とはいえ、これは「ものづくりプロジェクト」ではなく、あくまでも「人づくりプロジェクト」。この場合、新入社員は「クライアント」でもあるクリエイターたちがつくりたいと思うモノ、譲れる部分、譲れない部分を理解してものづくりの現場に橋渡しし、限られた予算と制作期間で可能な限りクオリティを高めたものをつくる、そのプロセスそのものが成果だ。社長、全役員へのプレゼンを経てプロジェクトは完了し、新入社員はそれぞれの部署に配属される。プロダクトの諸権利はクリエイターが持ち、製品化のためのメーカー、職人とのコネクションもできる。新入社員にとっても、参加クリエイターたちにとても魅力あるプロジェクトだ。[新川徳彦]

展示風景
Photo: Takumi Ota

2016/10/13(木)(SYNK)

2016年11月01日号の
artscapeレビュー