2018年01月15日号
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artscapeレビュー

月─夜を彩る清けき光

2016年11月01日号

会期:2016/10/08~2016/11/20

渋谷区立松濤美術館[東京都]

いきものにとって太陽が不可欠なことはいうまでもないが、視覚的には太陽よりも月のかたちが意識に上りやすく思うのはそれが満ち欠けによって日ごとに姿を変える存在だからだろうか。明治時代に太陽暦が採用されるまで、日本ではながらく太陰暦が用いられ、月の満ち欠けによって生活のサイクルが決まっていたことも、月の姿に意識的になる理由であろうか。本展はそうした日本人の生活と深い関わりを持つ月をモチーフとした絵画、工芸品を7つの章に分けて紹介するテーマ展。第1章は「名所の月」。中国湖南省の洞庭湖の上空に浮かぶ秋月を描いた《洞庭秋月図》から始まり、浮世絵に描かれた近江八景《石山秋月》、名所江戸百景など広重が描いた月へと至る。「月」に注目すると橋の下に満月を配した広重《甲陽猿橋之図》の構図がひときわすばらしい。第2章は文学。月に関わる詩歌や物語を絵画化した作品のなかで注目すべきは竹取物語であろうか。第3章は月にまつわる信仰で、月天像が紹介されている。第4章は「月と組む」。月と山水、月と美人、月と鳥獣など、月と組み合わせることで作品には季節や時間帯が含意される。広重《月に雁》のように季節は秋が多いが、中には朝顔や桜花との組み合わせもある。第5章は月岡芳年が月を主題として描いた「月百姿」。第6章は武具と工芸。月はしばしば刀の鐔のモチーフに用いられているが、出品作品のなかでは棚田に映る三日月を意匠化した西垣永久《田毎の月図鐔》が興味深い。第7章「時のあゆみと月」には暦や十二カ月を主題にした作品が並ぶ。なお、会期中の11月14日には満月が地球に近づく「スーパームーン」を見ることができるそう。それも今回は68年ぶりに月が地球に最接近するとのことだ。[新川徳彦]

2016/10/07(金)(SYNK)

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