2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ドレッサーの贈り物─明治にやってきた欧米のやきものとガラス

2016年11月01日号

会期:2016/09/27~2016/12/18

東京国立博物館本館本館 14室[東京都]

1873年(明治6年)に開催されたウィーン万国博覧会に、明治政府は初めて公式に参加。西洋技術を学ぶために多くの人材を派遣し、博覧会出品作品など多数を参考資料として購入した。しかしながら、1874年3月20日未明、日本からの出品作品や現地で購入した品々を積んで日本に向かっていたフランス船ニール号が伊豆半島西岸で沈没。乗員・乗客90人のうち救助されたのは4人。翌年に積荷の一部は引き揚げられたものの、大部分は海に沈んでしまった。この悲報を聞いたサウス・ケンジントン博物館(現・ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)の館長・フィリップ・クンリフ=オーウェン(Sir Francis Philip Cunliffe-Owen, 1828-1894)が、ヨーロッパの美術工芸品を集めて日本に贈ることを提唱。集められた300点を超える贈り物を携えて1876年(明治9年)に来日したのが、イギリスのデザイナー、クリストファー・ドレッサー(Christopher Dresser, 1834-1904)だった。贈り物の中で最も数が多かったのはやきものとガラスで、ドレッサーはその選定・収集に深くかかわっていた。これらの品々は工業用の見本として使用されて大部分が散逸。現在、東京国立博物館には58点、京都国立博物館には5点が収蔵されているという。本特集展示には東博が所蔵するこれらの陶磁器とガラス器、およびドレッサーに関わる工芸品、ニール号からの引き揚げ品など48点が展示されている。「贈り物」の陶磁器はイギリスおよびドイツ製。中でも目を惹くのはドイツでつくられた、16世紀フランスの陶芸家ベルナール・パリッシーのグロテスクな器の写し。当時ドイツではこのようなヨーロッパの古い陶器の写しが流行していたという(こうした流行が宮川香山の高浮彫がヨーロッパで人気を博した背景にあろう)。イギリス製の磁器フィギュアにはマイセンやセーブルの影響が見える。ドレッサーがデザインしたイギリス・ミントン社の器もある。色ガラスの小品はオーストリア製、デカンタや花瓶などの透明なガラス器はイギリス製だ。これらの贈り物はいずれも当時の超一流の美術工芸品というわけではなさそうだが、19世紀後半ヨーロッパにおけるデザインの流行と日本との関わりを見ることができる興味深い史料だ。[新川徳彦]

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