永瀬沙世「CUT-OUT」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

永瀬沙世「CUT-OUT」

2016年11月15日号

会期:2016/09/23~2016/10/08

GALLERY 360°[東京都]

一時期コラージュ作品の制作に凝っていたことがあるので、「CUT-OUT」(切り抜き、切り絵)の愉しさは僕もよく知っている。鋏で紙を切り抜くのは、筆で描くように自由にはいかないし、つい切り過ぎたり、細かい部分が抜け落ちてしまったりもする。だが、逆に自分では思ってもみなかった大胆なフォルムがあらわれ出てくることもある。なによりも、紙に鋏で切れ目を入れていくときの独特の触覚的な体験そのものに、不思議な魅力があるのではないかと思う。
永瀬沙世が、そんな「CUT-OUT」の面白さに目覚めたのは、アンリ・マティスの作品を知ったからだという。マティスは78歳になって、絵筆を捨て、「CUT-OUT」の制作に没頭し始めた。「何かから解放された彼のアトリエがあまりにも自由に満ちていてびっくりした」のだという。たしかに、今回東京・表参道のGALLERY 360°で展示された、永瀬の一連の「CUT-OUT」作品には、のびやかな解放感がある。
永瀬はまず紙を網目状に切り抜き、女性モデルがそれらと戯れている様子を撮影した。その画像をアルミ板にインクジェット・プリントし、さらにその上に色のついたフィルターを、少し間隔をとって重ねている。アルミ板とフィルターの質感のズレが、刺激的な視覚と触覚を同時に刺激する効果を生み出していた。会場には「CUT-OUT」された銀色の紙そのものも展示されていたのだが、それらはあたかも近未来の衣装のようにも見える。それらを実際に女性モデルに着せるパフォーマンスも面白そうだ。このおしゃれで軽やかな連作は、まだいろいろなかたちで展開していく余地がある。

2016/10/05(水)(飯沢耕太郎)

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