artscapeレビュー

新設常設展「Designer Maker User」

2017年02月01日号

デザイン・ミュージアム[ロンドン(英国)]

テムズ河南岸にあったデザイン・ミュージアムが、昨年11月にケンジントンに移転し、再オープンした。ミュージアムの広さは以前に比べ3倍に増大、2つの特別展のスペースに加え、新しく無料の常設展とデザイナー・イン・レジデンスの場が設置された。そもそもこのミュージアムは、20世紀の近代デザインを展示することを目的に、1989年に創設された。今回できた常設スペースは「Designer Maker User」と銘打たれ、デザイナーと作り手と使い手の社会文化的諸関係を明示しながら、デザイン製品の生産から消費までの物語を紡ぎだそうとする。展示デザインにも意外性があってハイセンス。イタリアのVespa(スクーター)が頭上に展示されたり、液晶画面による説明パネル、さらに3面の大スクリーンには映像作品と言ってもよいほど凝った、デザイン関係者のインタビュー/ドキュメンタリー作品が投影されていたりする。来館者同士やミュージアムのスタッフも気さくに会話に加わって、会場は大いに盛り上がっていた。なお移転地はコモンウェルス・インスティチュート(英連邦協会)の跡地で、モダニズム建築としての歴史的価値も高い建物。今回の移転はテレンス・コンラン卿(ミュージアム設立者・デザイナー・実業家)の莫大な寄付によって可能になったそうだが、改装後の見事な内装はさすが。吹き抜けを活かしつつ階段などは木製の調度で仕上げ、非常にドラマチックな空間となっている。二つあるミュージアムショップも楽しいうえに、展示は大変充実、また立地も便利になったので、訪英の際はぜひ来訪をお薦めする。[竹内有子]


左:常設展「Designer Maker User」入口(筆者撮影) 右:会場風景

2017/01/08(日)(SYNK)

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