2018年04月15日号
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artscapeレビュー

後藤靖香個展「必死のパッチ」

2017年02月01日号

会期:2016/12/16~2017/01/21

京都精華大学ギャラリーフロール[京都府]

後藤靖香は、祖父や大叔父など親族の戦争体験をもとに、戦争の時代を生き抜いた人々や、さほど知られていないエピソードを描く若手作家だ。作品の特徴は、丹念な取材を行なうこと、画風が漫画調なこと、極端な構図を用いる場合があること、巨大な作品が多いこと、である。筆者は後藤の作品に対し、魅力と疑問の両方を感じてきた。魅力は、先に述べた作品の特徴による。疑問は、戦争を知らない世代が戦争を描くことである。戦争を否定するのであれ賛美するのであれ、未体験者が戦争を扱うのはいかがなものかと。しかも彼女は1982年(昭和57)生まれ。義務教育中に東西冷戦もバブル景気も終わっていた世代なのだ。しかし最近、考えが変わった。戦後世代が戦争をテーマにした例などいくらでもあるし、むしろ若い世代のほうがイデオロギーの呪縛が希薄なので、ニュートラルかもしれない。しかも後藤はきちんと取材を行なっているし、描く内容も一個人に密着している。いわばオーラルヒストリーとしての絵画であり、イデオロギーが前面化した人たちとは一線を画した、新しい戦争画なのである。

2017/01/13(金)(小吹隆文)

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