artscapeレビュー

大和美緒個展「VIVID-STILL 静か。鮮烈で_」

2017年02月01日号

[京都府]

会期:2017/01/06〜2017/01/22 Gallery PARC

会期:2017/01/14〜2017/02/04 COHJU contemporary art

大和美緒は、シンプルな行為を反復することで豊かな世界をつくり出す新進画家だ。例えば、無数の赤い点から成る作品では、最初に打った点の隣に次の点を打ち、その次は下に点を打つという作業を延々と繰り返す。すると画面には布地のドレープ(ひだ)を思わせる有機的な波模様が現われるのだ。また、黒い線による作品では、最初に引いた線のすぐ隣に次の線を引く作業を繰り返す。すると線は徐々に曲線を帯びはじめ、最終的には山地の地図のような画面ができあがる。ほかには板ガラスにインクを垂らしたカラフルな作品もあった。彼女は制作中に画面全体を見ないように心がけている。つまり人為を封じた絵画ということだ。だとすれば作品に現われる模様は、フラクタルや1/fゆらぎのように自然界の法則を体現したものと言えるだろう。一方、いくら人為を封じると言っても、人間には欲望があるし、制作時間が長引けば疲労も蓄積する。作品にはそうした心身の軌跡も刻まれており、複数の揺らぎが同一画面上で響き合う点に、作品の面白さが凝縮されている。

2017/01/17(火)(小吹隆文)

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