artscapeレビュー

小山泰介個展「Generated X」

2017年02月15日号

会期:2017/01/06~2017/02/26

G/P gallery[東京都]

小山泰介の作品は、このところより抽象化の度合いを強めている。今回のG/P galleryでの個展には、近作の《PICO》(2015)、《LIGHT FIELD》(2015)、《VESSEL-XYZXY》(2016)、《NONAGON PHOTON(LML15)》(2015)の4作品が展示されていた。どれもフラットベッドスキャナー、ハンドスキャナー、デジタルハンディ顕微鏡、インクジェットプリンターなどで画像の変換を繰り返しつつ出力して作り込んだ作品である。
例えば、メインの会場で展示されていた《PICO》は、「複数のデジタルデバイスを用いて写真プリントとデジタルデータ双方にアプローチすることによって、デジタル環境において無限に抽出可能となった色やテクスチャーなどの情報から新たなイメージを生成することを試みた」ものだ。具体的には旧作の《RAINBOW FORM》のイメージから、単色の部分のピクセルを1500倍に拡大し、長さ6メートルのロール紙にプリントして天井から吊り下げている。ほとんど巨大なカラーチャートという趣で、これまでの小山の作品と比較しても、その抽象度はほぼ極限近くにまで達していた。デジタル環境を再利用した「イメージ生成」の試みには、小山に限らずいろいろなアプローチが見られるが、まずはここまで徹底してやりきったことを評価するべきだろう。
ただ、その画像の表面に「デジタル現像ソフトの粒子効果」によるノイズめいた視覚効果が施されているのはどうかと思う。写真作品としてのアイデンティティーを保つためのアリバイづくりに見えかねないからだ。また、このような手法優先の作品にありがちなのだが、仕掛けがあからさま過ぎて、見続ける意欲を減退させてしまう。《RAINBOW FORM》や《NONAGON PHOTON》のような、象徴レベルに作用する映像の喚起力が失われてしまうと、概念操作のみが肥大化した薄味の作品になってしまうということだ。むしろ、同時に展示されていた、同作品の画像を、モニター上にスライドショーとしてアトランダムに映し出す《PICO-INFINITY》のほうに可能性を感じた。

2017/01/07(土)(飯沢耕太郎)

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