2018年12月15日号
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artscapeレビュー

5Rooms─感覚を開く5つの個展

2017年02月15日号

会期:2016/12/19~2017/01/21

神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]

頭で考えるより、いかに「心に響くか」という直感で選ばれた5人のアーティスト。うち3人は未知の作家なので、どんなアンサンブルが聞かれるか楽しみだ。最初の部屋の出和絵理は、和紙のような白い素材で花や花器みたいな幾何学的形態を組み立てているが、じつはこれ、薄く伸ばした磁器だという。次の部屋の染谷聡は、植物素材と漆を組み合わせた彫刻ともオブジェとも現代いけばなとも呼べそうな作品。このふたりの作品は繊細で魅力的だが、それ以上に伝わってくるものがない。ひとことでいえば工芸的。さらに次の部屋の小野耕石は、紙の上にシルクスクリーンの版を100回くらい重ねてインクを盛った作品を、水平に寝かせて見せている。ほかに動物の頭蓋骨や蝉の脱け殻にもインクを盛っている。これも繊細で根気のいる仕事で、ある意味工芸的ともいえるが、いったいなにをやりたいんだか、どこにたどりつくんだか、よくわからない不気味さがある。次に進むと、齋藤陽道によるスライドインスタレーションとプリント写真の展示で、前の3人との共通性が失われてしまい、どういう企画展なのかつかみがたくなる。まあ5人の個展と考えれば共通性は必要ないのだが。さらに勝手に期待したアンサンブルをぶち壊してくれたのが、最後の大きな部屋に展開する丸山純子のインスタレーションだ。暗い空間に長さ10メートル以上はあろうかという廃船をなかば解体し、上から雪かホコリのように石鹸粉をまいている。ほかにも廃油石鹸の巨大な固まりの上から水滴を垂らして浸食させたり、殴り書きしたおびただしい量のボール紙を壁に貼ったり。ここには工芸的な意味での繊細さはなく、むしろ暴力的ともいうべき解放感に満ちている。出品作家5人に共通項はないけれど、見る順序は絶対これじゃないとダメだろうね。

2017/01/16(月)(村田真)

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