2018年06月15日号
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artscapeレビュー

美しい偶然と意図

2017年02月15日号

会期:2017/01/18~2017/01/30

国立新美術館[東京都]

タイトルを聞いてなんの展覧会かと思ったが、サブタイトルは「地域で共に生きる障害児 障害者アート展」。港区内の障害者施設でつくられた絵や工作を公開し、障害者への理解を図ろうということだ。ある壁には港区内の小中学校の生徒たちと、施設や作業所に通う障害者の作品を混ぜて展示しているが、ひと目見て障害者の作品は区別がつく。それだけユニークだからだ。逆にいうと、小中学生の描く絵はみんな似たり寄ったりで哀れなくらい。展示室の奥には代表的な「アール・ブリュット」の作品も展示されていて、こちらのインパクトはメガトン級だ。例えば斎藤勝利は、スケッチブックの見開きいっぱいに鉄橋やトンネルなどの風景画を描いている。車や電車から見た風景だろうか、どれもパースが利いているし、建造物の構造もしっかり捉えている。聾学校出身の彼は耳が聞こえない分、見える世界を手でつかむように触覚的に把握しようとしているのかもしれない。だが、いまは目も見えなくなったそうだ。辻勇二は高い場所からながめた街景を記憶に留め、家に帰ってからペンで克明に描いていく。風景でも本でも音でもいちど目(耳)にしたものはすべて暗記し、再現できてしまうという、いわゆるサヴァン症候群だ。彼の場合、必ずしも正確な再現ではないが、屋根の瓦1枚1枚、線路の枕木1本1本まで描き倒し、画面を埋め尽くそうとする執念みたいなものに圧倒される。彼らの作品は「理解」するべきものではない。われわれ凡人の理解を超えたところにあり、「畏敬」すべきものである。

2017/01/18(水)(村田真)

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