artscapeレビュー

プレビュー:“芸術歌曲”の誕生と音楽の近代

2017年02月15日号

会期:2017/03/25

京都府立府民ホール“アルティ”[京都府]

京都市立芸術大学・日本伝統音楽研究センターが主催するレクチャーコンサート。19世紀中頃に西洋化の波が押し寄せた後、20世紀初頭の東アジア諸地域において「芸術歌曲」というジャンルが盛り上がりを見せた。母語による詩をもつ「芸術歌曲」は、さまざまな背景から、東アジア諸地域の作曲家にとって重要な創作ジャンルとなっていったが、驚くべきことに、同時代のオーストラリアにおいても同様の現象が見られた。また、この時代の東アジアには、江文也のように、「国境」を越えて活動する作曲家も現われた。
コンサートのプログラムでは、20世紀前半に東アジア(日本、台湾、韓国、中国)とオーストラリアで作曲された「芸術歌曲」が、各地域の歌手により、それぞれの言語で歌われる。合わせて、音楽評論家の片山杜秀によるプレトーク・レクチャーも行なわれる。また、3月26日には、関連イベントとして国際シンポジウム「1900-1950 東アジアとオーストラリアの芸術歌曲」が同志社女子大学にて開催される。
このレクチャーコンサートは、「芸術歌曲」という装置を通して、植民地近代における帰属意識の複雑な形成過程、その共通性と地域的な差異をあぶり出し、再考する貴重な機会となるだろう。

2017/01/30(月)(高嶋慈)

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